
Another2001っておもしろい?
この記事では、綾辻行人さんの長編小説「Another2001」の魅力をお伝えします。
あらすじ、よい点悪い点をまとめました。
結論を言えば、寝不足必死の傑作で、多くの方におススメしたい。
この記事でわかること
- Another とは?
- 【ネタバレなし】冒頭部分のあらすじ
- 3つのよい点と1つの悪い点
この記事を書いたひと

- Anotherシリーズ読破
- 小説好き
- さまざまなジャンルの小説を読む
本記事をご覧いただくことで、「Another2001」が読みたくなります。
「Another」とは?

- 綾辻行人さんの小説作品
- 学園ホラー&ミステリーを特徴とした大人気シリーズ
- 3部作
高いレベルでホラーとミステリーをうまく融合させています。
シリーズを読む順番
3冊が、発表されています。
- 『Another』
- 『Another エピソードS』
- 『Another2001』
の順番です。
表紙絵を描いていらっしゃるのは、遠田志帆さん。
どこかはかなげで、ミステリアスなこの絵につられて、ついつい手に取った方も多いと聞きます。

『Another』は、2010年版の「このミステリーがすごい!」国内編、第3位!
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『Another2001』は、2021年度版の「このミステリーがすごい!」国内編、第3位!
「Another」シリーズは、第1巻から読んだ方がいい?
『Another』から読むことを、強くおススメします。
シリーズ物特有、「読んでいる」前提のつくりとなっているからです。
もしも可能なら、シリーズ既刊二作を読んでから手に取っていただければ、とも。
既読だけれども内容を忘れているという方は、発売までにおさらいをしておいてもらえると、たぶん三倍くらいは楽しめるはずです。
引用 カドブン 綾辻行人『Another2001』発売記念インタビュー より
と、著者綾辻さんもおっしゃっています。
第一作目「Another」が、とにかくおもしろい!
「Another」シリーズに興味を持たれたなら、ぜひ「Another」から。
『Another』上下巻セット(電子書籍)もあります。
続編がある?
原作者 綾辻さんによれば、もう一つ構想があるとのこと。
『Another』にはもう一つ続編(たぶんシリーズ最終作となる)の構想がある。
それに向けての布石もいくつか、本作中に打ってあるのだが・・・
実際にいつ書くのか、書けるのかについては今のところ未定
引用 『Another2001』 あとがき より
「Another2001」に関して、こんなこともおっしゃっています(あとがきより)
- 当初は2~3年で書き上げる予定
- 予定が遅れる。長期休載1年をはさみ5年以上かかった
- 執筆はかつてなく難航
ご高齢ということもあり、体力的にもつらかったとのこと。
「続編はちょっと難しいかなぁ」という印象ですね。
インタビューと動画
著者 綾辻行人さんのインタビュー。
「Another2001」制作秘話や裏話が、興味深い。
ついに、Anotherが来た! 大人気学園ホラー&ミステリ 綾辻行人『Another 2001』本日発売‼
綾辻さんによる紹介動画(35秒)、見つけました!
ご本人の肉声に加えて、作家さんの職場が見える!
その他の動画(あと4つ)と紹介サイトです。
あらすじ

主要な登場人物3人を紹介、冒頭のあらすじです。
主な登場人物

見崎 鳴(みさき めい)
本シリーズのヒロイン。左目が義眼で、人を見ると<死者>の色が分かる。

榊原 恒一(さかきばら こういち)
前作『Another』の主人公。
比良塚 想(ひらつか そう)
本作の主人公。夜見北中3年3組の生徒。
冒頭のあらすじ(ネタバレなし)
始まってしまった。
そんなはずは、なかった・・・のに、
どうして。
引用 『Another2001』 著 綾辻行人 出版 KADOKAWA
今年の<もう一人>は、誰ー?
多くの犠牲者が出た1998年度の<災厄>から3年。
春から夜見北中三年三組の一員となる生徒たちの中には、3年前の夏、見崎鳴と出会った少年・想の姿があった。
<死者>がクラスにまぎれこむ<現象>に備えて、今年は特別な<対策>を講じる想たちだったが、ある出来事をきっかけに歯車が狂いはじめ、ついに惨劇の幕が開く!
相次ぐ理不尽な ”死” の恐怖、そして深まりゆく謎。
<夜見山現象>史上最凶の<災厄>に、想と鳴はどう立ち向かうのかー?
引用 『Another2001』 著 綾辻行人 出版 KADOKAWA
もう少し、付け加えます。
<ある年>と<ない年>
「なぁ、この間の話、どう思う?」
「呪われた三年三組か?」
「ああ、信じるか?あの話。」
「微妙。”呪い”みたいなものが、実際あるなんて話、信じられる?」
「去年、その前の年も、<ない年>だったそうだぜ。でも、まだ終わってないかもしれないって。」
「<ある年>だと、いろいろ物騒な事件や事故が起きるとか聞いたぜ」
「ああ、人がたくさん死んだって・・・」
申し送りの会
夜見山中三年三組には、毎年3月に行われる奇妙な行事がある。
前の三年三組から、次の三年三組へ引き継ぎ。
通称「申し送りの会」。
4月に三組になると決まった生徒を集めて、とある情報を伝える。
今年が、<ない年>ならば問題はない。
もし、<ある年>だったら・・・
<いないもの>

<ある年>には、クラスに死者がまぎれ込む。
関係者すべてに、記憶が書き換えが行われてしまうため、誰が死者か分からない。
クラスにまぎれ込んだ1人の死者によって、増えたクラスの人数。
クラスの人数が増えたままにしておくと、関係者が次々と命を落とす<災厄>がおきる。
そこで、<対策>である。
クラスメイトの1人が<いないもの>を演じることで、クラスの人数を減らす。
仮に、<ある年>であっても、クラスの人数を調整する。
このような<対策>で、<災厄>を防ぐことが分かっている。
今年の<いないもの>は、ぼく「比良塚 想(ひらつかそう)」が立候補した。
今年の対策は・・・
ところが・・・
「本当に、<対策>はそれだけでいいんでしょうか?」
江藤という女子生徒は言う。
「それだけだと不安なので、今年はそれ以上の対策を講じてみてはどうでしょうか?」
ー<いないもの>を2人にするー
それが、今年の対策。
<いないもの>1人目は、ぼく、比良塚 想。
そして、もう一人の<いないもの>は、葉住結香(はずみゆいか)と決まった。
今年は、<ある年>?<ない年>?

今年は、<ある年>か?<ない年>か?
それは、4月の始業式で判明する。
クラスにまぎれ込むもう一人は、『死者』。
始業式を終え、教室に入る。
クラス全員が席につくとき、1人分のつくえといすが足りなくなるのだ。
体育館での始業式を終え、三年三組に入るが、誰もがなかなか席に着こうとしない。
異様な緊張感が漂うクラス内。
「とりあえずみんな、席に」
<対策係>の女子が言う。
しばらくののちー
事態は明らかになる。
「ああ・・・」
教壇に立つ神林先生の口から、震えるような声が落ちた。
ーつくえといすが一組足りないー
こうして、ぼくと葉住の<いないもの>としての1年が始まった。
もういや!

<いないもの>
クラスの一員でありながら、クラス全員や先生たちからも、「いない生徒」として無視され続ける。
そのプレッシャーは、相当なもの。
過去に、何人もの<いないもの>役の生徒が、耐えきれず脱落した。
5月上旬、3限目の理科の授業中。
それは、起こった。
<いないもの>を演じて、1か月。
近ごろ、様子のおかしかった葉住結香(はずみゆいか)に限界が訪れる。
「無理・・・」
「<いないもの>は、もうイヤ!」
「わたしは、ここにいるの!無視しないで!」
ひっそりとスタートする<災厄>
「保険」であるもう一人の<いないもの>の脱落。
それは、何を意味するのか?
<災厄>は、始まってしまったのか?
葉住結香が、<いないもの>の役割を放棄した同じころ、ひっそりと息を引き取った関係者が1人いた。
がんの末期で入院していた60代の男性。
氏名は、『神林丈吉』。
三年三組担任の神林先生のずいぶん年の離れたお兄さんが、その人だった。
止まらない恐怖、深まる謎・・・・・
「考えて。ーそして、思い出して。」
著者7年ぶりの長編新作 大人気 学園ミステリー&ホラー
引用 『Another2001』 著 綾辻行人 出版 KADOKAWA
感想

よい点を3つ、悪い点1つ挙げてみます。
よい点
- 読みやすい文章
- Anotherをさらに進化させたトリック
- 大御所の安定感
【よい点1】読みやすい文章

変なクセや表現がない
綾辻さんの文章は、凝った表現がなく、読みやすい。
ミステリー&ホラーの本作。
あまり文章自体が回りくどい、表現が凝っていると、読者がついていけない。
読みやすい文章に加え、おもしろさもあり、「気づいたら、読み終えていた」。

以上のような、感想が多く見られます。
スラスラ読める
804ページあります。


かなりの分厚さです。
しかし、読んでみると、意外にスラスラ読めます。
文章のリズムがよいからです。
さらに、もう一つ。
綾辻さんの文章は、女流作家さんのような文章だと感じます。
文章には、女性らしい「繊細さ」「柔らかさ」「伸び」を感じるからです。
理屈っぽくなく、硬すぎない文章。
スラスラ読めるのは、このあたりが要因かと考えます。
【よい点2】Anotherをさらに進化させたトリック

高い評価を得た、前作『Another』より、上を行くおもしろさです。
トリックや仕掛けも、前作よりさらにパワーアップ。
『Another』では、「死者はだれか?」の謎がメインでした。
『Another2001』は、それに加えて、
なぜ<災厄>が、とまらないのか?
私は、最後の最後まで『謎』が、さっぱり分かりませんでした。
ページをめくる手がとまらない!
『謎』につられて、最後まで一気に駆け抜けるように読み切りました。
ラストでは、多くの方が、「えっ!」と度肝を抜かれるでしょう。
「ホラー」「ミステリー」のバランスもよく、高いレベルでうまく融合。
いい意味で、「Anotherシリーズ」らしい特徴が出ている作品といえます。
【よい点3】大御所の安定感

奇をてらわなくてもおもしろい
特別、目新しい仕掛けがあるわけではありません。
オーソドックスであり、ミステリーの王道。
「奇をてらわなくても、おもしろい小説は書ける」を地で行くよう。
このあたりは、小説を書き慣れた作者 綾辻さんの高い力量のおかげ。
それほど目新しいことをせず、物語を展開。
さまざまな伏線を回収しつつ、ラストもしっかり着地。
なにより、ここまでおもしろい作品が書けることに、本当に驚かされます。
【ほんとうに?】綾辻さんのコメント
「あとがき」を読んで、びっくりしました。
執筆期間中、いったい自分はこの小説をおもしろく書けるのか、書ききれるのか、という不安が常にあった気がする。
それまでに書いてきたものとはある意味、大きく構造の異なる物語だったからだろう。
加えて、僕ももう決して若くない年齢で、もとより自分の体力・生命力にまるで自信がない。
連載が長期化するにつれ、この作品が完成する前に倒れてしまったらどうしよう、というふうな不安につきまとわれもした(ーかなり切実に)。
そんなわけで、今は正直、ひたすらホッとしているところである。
引用 『Another2001』あとがきより
読者の私からは、「横綱相撲」のような、余裕がチラホラ垣間見えました。
ご本人が語る苦労感は、作品から微塵も感じません。
むしろ、「あとがき」を読んでも、「ほんとう?」と疑ったほど。
これだけ追い込まれた中で、高品質な作品を生み出してしまう。
「さすがベテラン」としかいいようがない。
勘の鋭い読者だと、「作者の苦労感」「書きにくさ」を感じ取ってしまいますから。
以上、『Another2001』は、大御所の安定感のおかげで、かなりおもしろいという話でした。
悪い点

大きな欠点が見当たらない『Another2001』ですが、1点だけ挙げます。
【悪い点】序盤がゆるい
実際に、<災厄>が起こり出すまで長いこと。
300ページ過ぎたあたりで、<災厄>が起こり始めます。
そこからは、グングン加速度を付けて、物語が進み始めます。
こう書くと、「前半は退屈?」と思われるかもしれません。
しかし、そういったことはありません。
読者をうまく引き付けて、飽きさせない。
グイグイ読ませてしまうのは、さすがに大御所 綾辻さん。
阻止できたかに見えた〈災厄〉が実は……という前半の流れをじっくりと書くのも、思い返すと結構しんどかったですね。
連載が長引いてくると、「館もののミステリのほうが書きやすいなあ」などと泣き言を言ってました。
引用 カドブン 綾辻行人『Another2001』 発売記念インタビュー より
と、ご本人はおっしゃっていますが。
いつ、<災厄>が起こるんだろう?
読んでいても、ピリピリとした緊張感があります。
小説である以上、どこかのタイミングで<災厄>は、起こります。
何も起きないと、ミステリー&ホラーになりませんから。
多少、物語が本格的に走り出すまで長いかなぁと感じます。
しかし、退屈ではないという話です。
まとめ:ベテランの底力が冴えわたる!寝不足注意の極上のホラー&ミステリー

この記事では、「Another2001」の魅力をご紹介させていただきました。
「さすがベテラン!」と思わせる安定した物語の展開や仕掛け。
前作を上回る、学園ホラー&ミステリーの傑作。
800ページ超と見た目は、圧倒されます。
しかし、夢中になって一気に読めたという方も多い。
止まらない<災厄>を目の前にしての絶望感。
どっぷりと物語にひたっていただいて、「絶望感」を、ぜひあなたも味わってみてください。
よい点
- 読みやすい文章
- Anotherをさらに進化させたトリック
- 大御所の安定感
わるい点
- 序盤がゆるい
参考までに、よろしければ。