
「Another エピソードS」って、おもしろいのかな?
この記事では、「Another エピソードS」綾辻行人さんの小説作品を紹介します。
ネタバレなく、よい点と悪い点を交えながら、その魅力を お伝えします。
「Another」シリーズは、学園ホラーと緻密なミステリーの高いレベルでの融合がウリのシリーズ。
「Another エピソードS」は、Another3部作の第2作目に該当しています。
Another3部作の第1巻「Another」から、読むことを強くおススメします。
- シリーズものは、やはり第1巻からがおススメ
- Anotherシリーズはかなりおもしろい!前作「Another」も。
- Anotherのキモになる秘密が、2作目から読むとネタバレする
「Another」の表紙はこんな感じ。
めちゃくちゃおもしろいです。

この記事でわかること
- Anotherとは
- 【ネタバレなし】あらすじ(冒頭)
- 感想 よい点 悪い点
「ネタバレは、ミステリーの面白さが失われる」と考え、ネタバレをしないように気を付けました。
本記事をご覧いただければ、実際に手に取って「Another エピソードS」を読みたくなります。
Contents
Anotherとは

Another(アナザー)は、大人気の学園ホラー&ミステリー小説作品。
作者は、綾辻行人さん。
Anotherシリーズは3部作構成。
作品順は、以下の通り。
- 「Another」(2009年発表)
- 「Another エピソードS」(2013年発表)
- 「Another 2001」(2020年発表)
シリーズ第1作目「Another」は、2010年版「このミステリーがすごい」国内編第3位です!



Anotherシリーズの最大の特徴は、「緻密なミステリー」×「学園ホラー」の極めて高いレベルの融合です。
「Another」シリーズの雰囲気にピッタリとマッチする表紙絵。
美しくもどこかホラーを予感させる、この表紙絵に惹かれて本を手にしたという方も多い。
「試し読み」ができます。
前作「Another」も、ネタバレなくご紹介させていただきました。
ご参考までにどうぞ。
-
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あらすじ
16秒ほどですが、動画を見つけました。
登場人物の名前ですが、
- 見崎鳴(みさきめい)
- 賢木晃也(さかきてるや)
と読みます。
1998年、夏休みー両親とともに海辺の別荘へやってきた見崎鳴、15歳。
そこで出会ったのは、かつて鳴と同じ夜見山北中学の三年三組で不思議な「現象」を経験した青年・賢木晃也の幽霊、だった。
謎めいた古い屋敷を舞台にー死の前後の記憶を失い、消えたみずからの死体を探しつづけている幽霊と鳴の、奇妙な秘密の冒険が始まるのだが・・・。
出典 「Another エピソードS」 綾辻行人 より
冒頭部分のあらすじもご用意しました。
僕が死んだ日

僕=賢木晃也(さかきてるや)が死んだのは、見崎鳴と再会した9か月後のことだった。
「死んだ」というのは、比喩ではない。
「死んだも同然」「心が死んだ」とかそのような意味ではなく、本当に「死んだ」のだ。
5月3日の日曜日。26歳の誕生日に、僕は死んだ。
その日の夜、時刻は8時半過ぎ。
空におぼろげな半月が浮かんでいたように思う。
そのときの場面、自分が命を落としたその瞬間のことは、はっきりと思い出せる。
場所は、家の中。
長年1人で暮らしてきた<湖畔の屋敷>、広間だ。

広間の硬い床の上に、僕は倒れている。
手足はいびつな角度に折れ曲がり、頭から血を流しながら。
普通に考えて、自分自身のそんな姿をみることはできない。
しかし、部屋に張られた1枚の鏡が、それを可能にしたのだ。
声が聞こえる。
(・・・・てるや、さん)
僕の名を誰かが呼んでいる。
鏡の中には、みずからが死にゆく光景。
その片隅には、声を発した「誰か」の影が映り込んで・・・
幽霊になった僕

ここまでが、僕の「生前の」記憶だ。
こうして、僕=賢木晃也は死んだのだ。
そして、こののち、なぜか僕は幽霊になってしまったのだ。
幽霊としての目覚めは、死後2週間後のことだった。
最初は、何が何だか分からなかった。
目覚めて最初に目にしたのは、あの鏡。
そう、自分の死の姿を映していた鏡だ。
しかし鏡には、僕の姿が映っていない。
(これは、どうしたことか?)
強い混乱と困惑。
やがて状況を正しく理解する。
僕はここにいる。
しかし、実体のある『生者』ではなく、自身の肉体を失った『死者』として。
いわゆる『幽霊』として、なぜか僕はここで目覚めてしまったのだ・・・
感想

3つのよい点、1つの悪い点を挙げてみました。
よい点
- 読みやすい文章
- テイストを変えながらも、アナザーらしい
- 【ネタバレなし】オチが素晴らしい
【よい点1】読みやすい文章

作者 綾辻さんの文章がやわらかいので、読みやすいです。
読んでいると、女流作家さんかな?と感じてくるほど。
- 「」(かぎカッコ)による話し言葉が多いこと
- 紙面ぎっしりに文章が書かれていない(適度な空白)
- どこか文章に遊びのような余裕を感じる
文章自体は、やわらかい。
一方で、題材として出てくるのはおどろおどろしい超常現象、極上の緻密なミステリー。
リズムよくスラスラ読めますので、読み返すこともありません。
グングンスピード感をもって読んでいくため、読書時間も短い。
【よい点2】テイストを変えながらも、アナザーらしい

Anotherの雰囲気を壊さず、テイストを変えてくるのはさすが大御所 綾辻さん。
通常、このようなことをすれば、経験の浅い作家さんならどこかでボロがでるもの。
本作「Another エピソードS」も、前作「Another」でキモとなる、『秘密』がベースにあります。
また、Anotherシリーズ特有の「常に死が間近にある」、どこかピンと張りつめた緊張感はそのまま。
読んでいても、随所に「Anotherらしさ」を感じとることができます。
しかし一方で、「Another エピソードS」は、読み進めるとテイストがかなり異なることに気づき始めます。
- 本作の舞台が、学園ではない(夜見山北中 3年3組ではない)
- 夏休みの旅行先という短い期間
- 古い大きな屋敷を探検
さすがに、ベテラン綾辻さん。
読者が、「読み進めても、大丈夫なのかな・・・」と不安になることはありません。
少しテイストの違う「Another」。
読者を、いったいどこへ連れて行ってくれるんだろう?という期待感の方が強いです。
「田舎」「夏」「大きな古い屋敷」から、何度か「となりのトトロ」の場面が頭をフッとよぎりました。

冒険心をくすぐる大きな古い屋敷。

どこか懐かしさを感じる田舎の夏。
さすがに、となりのトトロほどの『昭和のレトロ感』はありません。
読みながら感じたノスタルジックさは、イメージにするとこんな感じという話です。
【よい点3】【ネタバレなし】オチが素晴らしい

ネタバレになるので詳細は避けますが、全く予想すらしないオチです。
多くの読者が、「えっ!」と驚きますし、作中もそんな気配すらない。
前作「Another」同様、中盤あたりまでは、物語はゆっくり進みます。
しかし、終盤に入ると一気に物語がググっと加速。
ササっとといくつかの伏線を回収。
予想外のオチをドンと出して、読者があ然としているうちに物語は終わります。
このあたりは、1つの作品内での強弱の付け方、緩急のうまさは手慣れたもの。
さすがは、綾辻さんだなぁと感心させられます。
最後の最後に、次作「Another 2001」へ期待が持てる終わり方にもなっています。
悪い点
- 良くも悪くも『外伝』どまり
よくも悪くも『外伝』どまり

『続編』と呼ぶには、少し物足りなさがあります。
- オチの弱さ
- 物語の懐の狭さ
- 舞台や登場人物の少なさ
一言で言えば、「ボリューム不足」を感じるからです。
一方で、おもしろさに関しては、かなり満足できる作品。
「Another エピソードS」と「Another 2001」をページ数で比較してみます。




ご覧いただくと分かりますが、見た目でも分厚さがかなり違います。
実際のページ数を比較すると、2倍以上の差が。
Another エピソードS | 316ページ |
Another 2001 | 797ページ |

単純に分量としても、「ボリューム不足感」はありますよね・・・
前作「Another」は、極めて高いレベルでうまくミステリーとホラーが融合されていました。
あの「Another」の続編と手に取りました。
どう好意的に考えても、肩透かしを食らったなぁという読了感が強く残ります。
ホラーのテイストが強く、ミステリーが弱いからです。
「Another エピソードS」は、読者の興味・疑問は、この2点。
- 賢木晃也は、本当に死んでいるのか?
- 賢木晃也は、本当に幽霊なのか?
作中は、その疑問を抱えながら、終始読者を魅了します。
最後は、この疑問はスッキリ解消されます。
しかし、あの名作「Another」の続編。

幽霊の秘密以外にも、きっと何かあるに違いない!!
と勝手に期待して読んでいました。
結論としては、それ以上でもそれ以下でもありません。
いい言い方をすれば、「賢木晃也は、幽霊か?」と謎はひとつだけ。
分かりやすくはあります。
しかし一方で、
前作「Another」のような、大掛かりで緻密なミステリーの続編を読みたい!
と望むファンにしてみれば、少し物足りなさを感じます。
まとめ:物足りなさはあるが、読者の想像を超えるオチが素晴らしい

この記事では、「Another エピソードS」のネタバレなく、その魅力をお伝えました。
ベテラン 綾辻さんの安定感がきらりと光る、とても面白い作品です。
ぜひ、実際に手に取って楽しんでいただければと思います。
よい点
- 読みやすい文章
- テイストを変えながらも、アナザーらしい
- 【ネタバレなし】オチが素晴らしい
悪い点
- 良くも悪くも『外伝』どまり
本作「Another エピソードS」は、第3作目「Another 2001」へと繋がる重要な話となります。
ファンとしては見逃せないですよね。
読んでいらっしゃらない方は、まずはシリーズ第1作目「Another」から読んでみて下さい。
ご参考までにリンクを掲載します。
上下巻が、合わさったもの
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