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【ネタバレなし】Another(アナザー) 綾辻行人 感想

「Another(綾辻行人)」って有名だけど、おもしろいのかな?



この記事では、Another(綾辻行人)を、ネタバレをせずレビューします。

なかなか出会うことのできない、メチャクチャ面白い寝不足必死の作品です。



先に、多くの方が感じる疑問点を解消します。

Q. 600ページ超える大作。本当に自分には読めるだろうか?

見た目に圧倒されますが、読んでみるとあっという間。

私も最初、たじろぎましたが、大丈夫でした。



多くの方も、「最初は読めるか不安だったけど、杞憂だった」という意見が多数。

私は不安だったので、地元の図書館で借りて読みました。




本記事をご覧いただければ、「Another」を読んでみたくなるはず。

多くの方に、読んでいただきたいですし、おススメできる作品です。



「Another」作品紹介

簡単ですが、紹介。



作者綾辻 行人
ジャンル ホラー&学園ミステリー
Another「Another」シリーズ 第1作目

「Another」は、 漫画、TVアニメにもなった大人気シリーズです 。

なんとパチンコ(!)にもなりました。

本当に人気シリーズだと証明のために映画、アニメ、コミックを紹介。

「へぇ~、ホントだ」でスルーしていただき、まずは、本で読んだ方がいいです。(いろいろな意味で)



シリーズ順にすると、

  • Another(2009年)
  • Another エピソードS(2013年)
  • Another 2001(2020年)

の3作 となっています。

作者 綾辻さんは、「Another」を3部作構成にすることを明言されています。



2010年版の「このミステリーがすごい」国内編で、第3位にランクインした。

また、第10回本格ミステリ大賞の最終候補にもなったが、1票差で受賞には至らなかった。

引用 『Another』 Wikipedia より



あらすじ

ご興味をもっていただくために、ネタバレなしで序盤の「あらすじ」を用意しました。

あ、おもしろそう!

そんな風に思っていただければ、幸いです。それでは、どうぞ。



気をつけてもう、はじまっているかもしれない(ミサキ・メイ)

その「呪い」は26年前、ある善意から生まれた。



1988年、春。夜見山北中学に転校してきた榊原恒一(15歳)は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。

不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎が深まるばかり。


そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!

この”世界”ではいったい、何が起こっているのか?


秘密をさぐるべく動き始めた恒一を、さらに謎と恐怖が待ち受ける・・・。

さらに読んでみたくなるように、もう少しだけ「あらすじ」を補足させていただきます。



親友からの奇妙な質問

転校した恒一だったが、すぐ親友ができる。

お調子者キャラの勅使河原、優等生キャラの風見の「腐れ縁コンビ」だ。



初日から、2人は恒一に尋ねる。

「ところでさあ、榊原ってあれか?レイとかタタリとか、信じるほう?」

「基本的には、真に受けないようにしているんだけど・・・」

「何があっても絶対、信じる気はない?」

「証拠でもあれば、別だけど・・・」



(いったいこの二人は、何が言いたいんだろう?)

少し気味の悪い感じがする恒一。



みんなには、見えていない?

数日、3年2組で生活していくと、奇妙なことに気づく恒一。



ここ3年2組には、クラスのみんなには見えない女子生徒、ミサキ・メイが存在しているのだ。

ミサキ・メイは、とても自由だ。

学校に来ているときもあれば、いないときもある。

授業中でも、目を離すとフッといなくなる、そんな存在。



実は転校前に、不思議な出会いをしていたミサキ・メイと恒一。

その存在感に惹かれ、ミサキ・メイに話しかける恒一。



恒一は、はじめクラス全員による「いじめ?」と疑ってみた。

しかし、そうではないことにすぐ気づく。

先生までもが、ミサキ・メイが見えていないのである。



本当に自分だけにしか見えないのか?そんな疑問を抱えたまま日々過ごす恒一。



意を決してみたものの・・・

数日後、どうしても気になった恒一は、意を決して親友 勅使河原に尋ねてみることにした。



「ねぇ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」

「ん?」

「あの席の、ミサキっていう女の子のことだけど・・・」

「変わった子だよね。いったい・・・」

「大丈夫か、榊原」

「しっかりしろよ」



恒一の背中をどんとたたき、勅使河原は足早にその場から去っていった。

(やはり、自分だけにしか見えていない?)



やばいんだよ、それ!

恒一がミサキ・メイに話しかけると、友人たちは決まって不思議そうな顔をする。

そんな生活にも慣れ始めてきたある日。

いつものように、ミサキ・メイの姿を見つけ、話しかる恒一。



恒一の携帯が鳴る。それは、勅使河原からの電話だった。

「いいか、サカキ。いないものを相手にするのはよせ。やばいんだよ、それ。」

「??」



サカキ・メイは恒一に言う。

「わたしは、いないものなの」

「みんなには私のこと、見えていないの。見えているのは榊原くん、あなただけ・・・だとしたら?」



混乱する恒一。

そんな中、クラス委員長 桜木ゆかりが凄惨な死を遂げる。

それは、これから起きる悲劇の、ほんの始まりに過ぎなかった。



感想

よい点と悪い点を挙げます。



よい点

よい点

  • 読みやすい
  • 完成度の高いミステリー
  • 緩急



【よい点1】読みやすい

文章がやわらかい

表現や言葉の使い方から感じる「文章のやわらか」。

読んでいても、難解な表現もない。

本を開いて1ページ目から、物語にスッと入れます。



女流作家さんかと勘違いした

丁寧な表現に加え、繊細で巧みな心理描写。

文章からは、男性の「力強さ」よりも、女性のような「やわらかさ」を感じる。



私は、いろいろな作家の作品を読んでいます。

少し読むと作家が、男性か女性かがなんとなく分かります。

読みながら、何度も「女性の作家さんの作品?」と不思議な感じを経験しました。



スイスイ読めて、頭に入りやすい

物語がスピードアップした中盤あたりから、斜め読みしていました。

それくらい、先が読みたいと夢中にさせる作品です。

と同時に、文章がやわらかく読みやすいため、頭に入りやすい。

  • 慌てて読んで、斜め読み
  • ストーリーが頭に入らず、ページを戻ったり、読み直しをする

ことの多い私。



本作では、読み直しすることもなく、スイスイ読むことができました。



【よい点2】 完成度の高いミステリー

300ページ待たされたかいがある秘密がある

全体で600ページ超あり、本作の最大の秘密が、300ページ過ぎたあたりで明かされます。

中盤の本作の秘密が明かされたあたりから、おもしろさも加速度的に上がります。



前半の300ページも、決して退屈ではありません。

予備知識なく読んだ方がいいですし、「待ったかいがある」とだけお伝えします。



普通の中学生たち

読んでいても、「身近に感じる恐怖」。

本作で登場するのは、ごく普通の中学生。



自分が子供時代に戻り、そのクラスの一員になったような錯覚すら覚えます。

「共感」するよりも、「クラスの一員になってしまう」ほうが、読み終わった者の感覚としては近い。



次々に起きる事件、いつ自分の身に降りかかるのか・・とついつい考えてしまいます。

自分は、普通の中学生活が送れてよかった!

と思い知らされます。



大御所の安定感

作者 綾辻行人さんは、大ベテランにして売れっ子作家。

一言で言えば、「ミステリーを書き慣れている」。



全体の物語の進め方、伏線の回収など、さすがベテラン。

抜かりはないですし、見事な仕掛け。



若手の作家の作品によくみられるような、

  • 名をあげてやろう的なガツガツ感
  • 新しいことをしたいと奇をてらう仕掛け
  • 実力と経験不足からくる空回り。伏線回収すらままならず終わる

読んでていても、別の意味で「ハラハラ」します。



安心して、物語に集中できるのはありがたい。

最初から最後まで「?」はありませんでした。

読者としては、最後まで読んでも伏線回収されないままなのは、不満が残りますからね。



【よい点3】 緩急

読者をじらすのがうまい

ぱっと見、600ページ超の本。

横から見ると相当分厚い!ぱっと見、辞書かと思いました・・・

見た目は、相当なもの。

見た目で「たじろぐ」という他の方の意見も分かります。



前半300ページあまりは、秘密は伏せられたまま物語が進みます。

300ページ、読者をじらしたまま飽きさせず読ませるには、相当な筆力が要求されます。



不思議なことにこれだけじらされても、読みながら「もう読むのやめた」になりません。

理由は、秘密を伏せながらも、読者を飽きさせない小さな波をいくつか用意していること。

読者が読みながら抱える疑問を、少しずつ少しずつ種明かししていくため、ついつい読み進めてしまいます。



このあたりのさじ加減もまた、「書き慣れているな」と感じさせます。



前半はスロー、中盤以降加速

前半は、秘密を伏せたままスロー。

秘密が明かされた中盤以降は、物語が大きく動き出すため、加速度がグッと上がる印象を受けます。

1つの作品内で、これだけの緩急の差がはっきりあるのは珍しいし、読者をひきつけることに成功しています。



前半の「じらす」こともそうですが、「緩急のつけ方」も綾辻さんの持つ相当な筆力を感じます。

前半の大人しく進む物語進行がウソのような、中盤以降の早さが待っています。



悪い点

手放しで絶賛しているのですが、1つだけ。

悪い点

  • 長い



【悪い点】長い

600ページ超えは、本を普段から読む習慣のない方には、手に取るのをためらわれます。

私のような、本好きでも、

読み切れるかな、これ?

とけっこう勇気が要りましたから。

くどいようですが、怖気づく分厚さ!重さもなかなかのもの。



記事の冒頭でも触れましたが、読み終わってみれば、見た目ほど分量を感じさせません。

もう終わりかぁ・・・

と逆に感じるほど楽しませてもらえます。

あまり気にせず、気軽に多くの方に手に取っていただきたいです。



ちなみに、「対談」での綾辻さんの話では、

  • 中学生が、おもしろくて一気に読んだ
  • 小学生も手に取ったと聞いた

とのことです。

おもしろさの保証に関しては、映画化やアニメ化された事実が物語りますよね。



対談

この対談を全部読むと、ネタバレを含んでいます。

しかし、作者 綾辻さんによる「Another」の裏話は必見です!

  • ネタバレしないように、対談の一部を紹介
  • 作者による「Another」の裏話を知ると、余計に読みたくなる

それでは、どうぞ。



『Another』は、アニメ化・映画化などもされ、海外でも大きな反響を呼びました。なぜこれほどまでに読者の心を惹きつけたのでしょう?



綾辻行人(以下、綾辻):第1作が刊行されたのは2009年。

もう11年も前なので僕の記憶も改変されているかもしれませんが(笑)、榊原恒一という中学3年生の男子を語り手にしたことで、作品世界に入りやすくなったのかもしれませんね。



見崎鳴という、左目を眼帯で隠した謎の美少女と出会うところから話が始まるので、いわゆるボーイミーツガールの趣もある。



学園ホラーでありつつも、本格ミステリ的な手法によるどんでん返しや伏線回収を仕込んでもいて、結果的に間口の広い作品になったんだろうと思います。



でも僕自身、当時の反響の大きさにはちょっと驚きました。

これまであまり小説を読んだことがないという中学生から、『Another』はおもしろくて一気に読めたという感想が聞こえてきたり、小学生の読者にまで届いていたり……と。



――主人公を中学生にしたからといって、若い読者を想定していたわけではなかった?



綾辻:そうです。自分としては、あのとき書きたかったネタと題材をもとにして、いつもどおり仕掛けのあるプロットをつくって、人物を配置して、いつもどおりの苦労をして書いただけで。



いい作品を書けた、という自負はありましたが、こんなに広く読まれるとは、というのが正直な気持ちでした。



本格ミステリを好む従来の読者にも大いに歓迎されたんですが、それも意外でしたね。

ミステリ作家がホラーを書くと、だいたいにおいてミステリファンは冷淡だったりもするので(笑)。



引用 Real Sound 綾辻行人が語る、シリーズ最新作『Another 2001』「ディテールを積み重ねていくうちに、ラストシーンが変化する」 より



話は続くのですが、以降はネタバレを含みます。

続きと、以下リンク先は、作品を読み終わってから読むことをおススメします。

綾辻行人が語る、シリーズ最新作『Another 2001』「ディテールを積み重ねていくうちに、ラストシーンが変化する」



まとめ:面白さは保証済み。寝不足注意のホラー&ミステリーの傑作

この記事では、綾辻行人さんの「Another」を紹介させていただきました。



600ページを超えるため、最初はたじろぎます。

読み始めると気にならなくなる、本当に面白い作品です。

気軽に手に取っていただきたいです。



よい点

  • 読みやすい
  • 完成度の高いミステリー
  • 緩急

悪い点

  • 長い



よろしければ、どうぞ

文庫本もあります。

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