「バフェットの法則 第4章 9つのケースステディで学ぶバフェットの投資法」。
投資実例1 ワシントン・ポスト
Contents
1. ワシントン・ポスト
ワシントン・ポストとは
- ワシントンを本拠に置くアメリカの新聞社。のちにTV局を買収。「メディアとコミュニケーション企業」に変身
- 経営者は、キャサリン・グラハム。困難な局面で、すぐれた経営能力を発揮
- バフェットは、キャサリンの友人になる
- キャサリン、その息子のダン・グラハムは、バフェットから「会社経営」を学ぶ
- バフェットの恩に対して、キャサリンは、ワシントン・ポストの取締役にバフェットを招いた
ワシントン・ポストにおける投資で、バフェットが使った法則。
使ったバフェットの法則
1. シンプルで理解できる事業か
2. 安定した事業実績があるかどうか
3. 長期的に明るい見通しがあるか
11. 事業の価値はどれくらいか
12. その事業を価値よりもはるかに安い金額で買収することは可能か
7. 1株当たり利益ではなく、自己資本利益率を上げようとしているか
9. 利益率の高い企業を探しているか
4. 経営者は合理的か
10. 1ドル利益を留保したら、企業の市場価値も1ドル以上あがるように心がけているか
以下で、法則に当てはめながら要約していきます。
1. シンプルで理解できる事業か
ポイント
- バフェットは、1969年 大手の新聞社「オハマ・サン」を買収
- バフェットは、新聞社のオーナーとして新聞事業を学んでいた
- ワシントン・ポストの株を初めて買ったときに、バフェットはすでに4年間の新聞社オーナーの経験があった
バフェットは、すでに新聞事業をオーナーとして経験していた。
そのため、ワシントン・ポストの事業への深い理解があった。
2. 安定した事業実績があるかどうか
ポイント
- バフェットは、個人的な経験と輝かしい実績から、ワシントン・ポストは信頼できる実績が残せると確信
- 個人的な経験とは、バフェットが子供のころ、ワシントン・ポストの新聞配達をしていたこと
- 輝かしい実績とは、新聞社としての実績に加えて放送事業でも輝かしい実績があったこと
3. 長期的に明るい見通しがあるか
ポイント
- 地域独占的な新聞の収益性は素晴らしく、世界トップクラスだ(バフェット談)
- 1980年代初め、全米には1700社新聞社があり、そのほとんどは競合を持たない地域独占状態
- 新聞は設備投資のニーズが低く、固定費も少ない。さらに値上げしやすい

注意としては、「インターネット」の前の話。
今の新聞は・・・
11. 事業の価値はどれくらいか
ポイント
- 1973年当時 市場でのワシントン・ポストの時価総額8,000万ドル
- バフェットの見立て 4億8,500万ドル
バフェットは、企業の価値を「現在価値理論」で計算する。
その際、以下の点を加味する。
- 新聞社の設備投資は、長期的に見ると減価償却費と同額になる
- 新聞社は、地域的に独占状態で新聞の値上げがしやすい
- キャサリンは優秀な経営者。利益率10%→15%にUPすることが可能


ワシントン・ポストは、みんなの目(市場)には、8,000万ドルの価値。
でも、バフェットの目には、4億8,500万ドルの価値があると見えていたんですね!
12. その事業を価値よりもはるかに安い金額で買収することは可能か
ポイント
- 一番堅実に見ても、ワシントン・ポストは、本質的価値からみて半額以下で、バフェットは買っている
- バフェット自身は、ワシントン・ポストの本質的価値の1/4で購入したと主張
- 本質的価値より割安な価格で購入。安全マージンというグレアムの教えに沿っている
※ 「安全マージン」とは、安く株を買うことで、株価下落しても損をしないようにすること
7. 1株当たり利益ではなく、自己資本利益率を上げようとしているか
ポイント
- バフェットが、ワシントン・ポストを買収した時の自己資本利益率は15.7%
- 優秀な経営者 キャサリン・グラハムのもとでさらに上昇。自己資本利益率36%
- さらに、キャサリンは借入金の削減も同時に達成。借入金削減と利益率UPの両立は称賛に値する

サラッと称賛に値するとありますが、同時に借入金削減と利益率UPするのは、とんでもなく難しい!
9. 利益率の高い企業を探しているか
ポイント
- 当初、テレビ事業の利益は出ていたが、新聞事業の利益率は横ばいだった
- 原因は「人件費の高さ」、特に労働組合とストライキに悩まされていた
- 経営陣は、新聞の発行が止まることを恐れ、組合の賃上げ要求を飲んできた
- 1970年代に入り、経営者キャサリン・グラハムは組合と対決する方針に変更
- キャサリンは、努力の末勝利。ワシントン・ポストの利益率は10.8%から31.8%と大きく上昇
4. 経営者は合理的か
ポイント
- 経営者キャサリン・グラハムは、新聞社として初めて自社株買いを行った
- 1990年には、株主に渡す配当金を増やした(増配)。配当を1.84ドルから4ドルへ大きく上げた
- 1990年に入ると、バフェットは新聞事業は、インターネットの登場でもはや儲からなくなると確信した
自社株を買うのは、発行した自分の会社の株を買い戻すことです。
効果としては、株価が上がります。
株主への還元としてよく使われる手法。
ワシントン・ポストについて、バフェットの言葉を借りよう(1991年時)
- 新聞、テレビ、雑誌は独自の基盤を持つ事業から、似た者同士になってきた
- インターネットの登場で、新聞の素晴らしい利益率は失われる。景気変動のような短期的なものでなく長期的な変化。
- ワシントン・ポストも例外ではない。ただし、他の同業者よりその変化はゆるやか
10. 1ドル利益を留保したら、企業の市場価値も1ドル以上あがるように心がけているか
ポイント
- 1973~1992年の間で、留保した利益1ドルに対して、1.84ドルの市場価値を上げることに成功
- 経営者キャサリン・グラハムは、他を圧倒する最高に優れた新聞経営者だった
- 1971~1993年キャサリンが会長を辞めるまでの年平均リターンは22.3%と驚異的に高い(新聞業界平均12.4%)

グラハム家は大変裕福で、キャサリンは、「超」がつくお嬢様。
まったくビジネス経験もなく、社長に就任。
ものすごい結果を出しました!
まとめ

ここでは、バフェットの投資実例として、ワシントン・ポストを見てきました。
- バフェットが知り尽くしているビジネス
- 優良ビジネスを、大幅に安く株を買う
- キャサリン・グラハムという優れた経営者がいたこと
バフェットの法則に照らし合わせると、まさにバフェットが好むビジネスだったことが、よく分かります。
一方で、バフェットが早い段階で、インターネットによる新聞ビジネスが崩壊することも見抜いていました。