「バフェットの法則 第4章 9つのケースステディで学ぶバフェットの投資法」。
投資実例3 キャピタル・シティーズ/ABC
Contents
3. キャピタル・シティーズ/ABC
キャピタル・シティーズとは
- テレビ局
- トーマス・マーフィー、ダン・バーグによる2人共同経営が特徴
- アメリカでもっとも成功したといってよいほどの共同経営
- 30年にわたり、共同経営。30以上のテレビ局や出版社を買収
- バフェットはマーフィーと友人。マーフィーはバフェットを取締役に招く
- 1985年のABC(テレビ局)とキャピタル・シティーズの合併は当時としては、史上最大のメディアの誕生
使ったバフェットの法則
1. シンプルで理解できる事業か
2. 安定した事業実績があるかどうか
3. 長期的に明るい見通しがあるか
11. 事業の価値はどれくらいか
6. 組織の習性に屈しない経営者か
10. 1ドル利益を留保したら、企業の市場価値も1ドル以上あがるように心がけているか
4. 経営者は合理的か
1. シンプルで理解できる事業か
ポイント
- ワシントン・ポストへの投資を通じて、テレビ、新聞、出版ビジネスを、バフェットは熟知していた
- バフェットは、ワシントン・ポストの経営に、10年間関与していた
- バークシャー・ハサウェイがABC株を購入したことで、さらにテレビ事業の理解が深まった
2. 安定した事業実績があるかどうか
ポイント
- キャピタル・シティーズとABCは、30年にわたり順調に利益を上げてきた
- 1975~1984年の自己資本比率は、ABCが17%、キャピタル・シティーズが21%と共に高い数字
- 負債も少ない
3. 長期的に明るい見通しがあるか
ポイント
- 放送局は基本的に収益性が高く、大きな余剰キャッシュフローを生み出す
- 1985年時点でバフェットは、テレビ・出版事業の収益性の高さを評価し、長期の見通しは明るいと判断した
- 1985年ケーブルテレビが出現。脅威になるかと思われたが、大衆は既存のテレビ局を選んだ
テレビ・出版事業の儲かる仕組み
- 大きな無形資産を生み出し、平均以上の収益性を生み出す
- いったんテレビ塔を作れば、追加の設備投資は少なく、運転資金も少ない
- 映画やテレビ番組の制作費は、広告収入が入ってきたら払えばいい
大きな利益を生むし、経費も少ないので儲かる。

儲かって儲かって笑いが止まらない!そんな感じでしょうか?
11. 事業の価値はどれくらいか
ポイント
- 5億1,700万ドル投資した(1株172.5ドルで、300万株)
- バフェットの最初の見立て 2億7,600万ドル(市場は2億ドル程度と見ていた)
- マーフィーはすでに伝説の経営者。優れたビジネスモデルが、さらに利益を増大させる。1株507ドルと見立て、300万株だから「15億2,100万ドル」
- この見立ては、バフェットには珍しくいくつかの不安定な要素を含んでいた
- 投資の決め手は、「優秀な経営者マーフィーがいたから」
当時、キャピタル・シティーズの株価は、高止まりしたままだった。
そのため、バフェットが割安で買うチャンスはなかった。
なぜバフェットは、割安な価格でないキャピタル・シティーズを買ったのか?
答えは、優秀な経営者 トーマス・マーフィーがいたからである。

高い利益を出した、マーフィーとバーンによる共同経営。
そこで、大事にしたのは、徹底したコスト管理。
- 給与、福利厚生、費用の削減。十分な特別手当をもらって1,500人退社(人件費削減)
- 役員専用室、役員専用リムジンの廃止
- 買収後、コスト削減をするのはマーフィーの仕事。企業経営はバーンに任せる
当時のテレビ業界では、格付けや視聴率が最優先。
利益は2の次という風潮だった。
マーフィーは、この風潮を打破する。
買収後、コスト削減に取り組むのはマーフィーの仕事。
コスト削減が終わり次第、マーフィーは、相棒バーンに企業経営を任せる。
マーフィーは、次の買収先を探すことと、株主関係に仕事を集中した。

徹底した役割分担。理想的な2人3脚ですよね。
6. 組織の習性に屈しない経営者か
ポイント
- テレビ事業は儲かるので、手元に現金が豊富ある
- マーフィーは、高すぎる買収は用心していた
- マーフィーは、よい買い物(買収)のためなら何年でも待てる経営者と評価されていた
- メディア事業は景気の動向を受けやすい。借入金による安易な買収は身を滅ぼすと警戒していた
- 借入金の返済、自社株買いをして企業の体質強化に努めた
テレビ事業は、大量のキャッシュフローを生み出す。
それに加えて、マーフィーの経営(徹底したコスト管理)のおかげで、さらに大きなキャッシュフローを生む。
これだけの大金を目の前にすると、何かやりたくなるのが経営者というもの。
高すぎる企業買収や、計画性のない事業拡大などが、その例。
マーフィーは、キャピタル・シティーズの成長には、買収は不可欠だと考えていた。
その一方で、高すぎる買収はとても用心していた。

「マーフィーという人に投資した」といっても言い過ぎではないですよね!
10. 1ドル利益を留保したら、企業の市場価値も1ドル以上あがるように心がけているか
ポイント
- 1985~1992年で、留保した利益1ドルに対して、2.01ドルの市場価値を生み出した
- 1985~1992年で、時価総額は29億ドルから83億ドルに上昇した
- 1990年の放送ネットワークビジネスの変化に伴う本質的価値の低下を乗り越えての数字
- バークシャーが投資した5億1,700万ドルは、15億ドルに。複利ベースで年率14.5%と高い数字
4. 経営者は合理的か
ポイント
- バフェットは、2人の経営者に高く評価している
- 積極的な自社株買いを実行した(株主還元)
- バークシャーの保有するキャピタルシティーズの株も、買い戻した
バフェットは長年、さまざまな企業と経営者を見てきた。
そのバフェットが、アメリカの公開企業の中で、最も経営が優れているのは、「キャピタル・シティーズ」だと言う。
経営者2人を最高な言葉で評価したバフェットの言葉は、以下。
トム・マーフィーとダン・バーグは優れた経営者というだけではない。
自分の娘の結婚相手になってほしいくらいの人物だ
1988年 キャピタル・シティーズは発行済株式の11%に相当する200万株の自社株買いを発表した。
その後も、積極的に自社株買いを進めた2人。
1988~1992年の間で、総額8億6,600万ドル、合計195万3,000株を買い戻した。
1993年には、バークシャーの保有するキャピタル・シティーズの株300万株のうち、110万株買い取る。

バフェットに、ここまで言わせる2人は本当にすごい!
まとめ

この記事では、バフェットの投資実例として、キャピタルシティーズ/ABCを見てきました。
- バフェットが熟知しているビジネス
- 「最高の経営者」と「最高のビジネス」の組み合わせ
- 株価は安くないけど、投資に踏み切った
バフェットには、珍しく高い株価にもかかわらず、投資に踏み切った例となります。
最高の経営者ペアと最高のビジネスモデルの組み合わせであったとして、なかなか勇気のいる投資。