読書

独裁の世界史 感想

『独裁の世界史』っておもしろいのかなぁ?

「歴史」って苦手だけど楽しめるのかな?




この記事では、『独裁の世界史』という新書を紹介します。

「独裁政治」をテーマに、

  • おもしろく
  • 分かりやすく
  • 「政治」「歴史」を同時に学べる

良書だからです。




 この記事でわかること

  • 感想(よい点、悪い点)
  • 投資家が読むべき理由
  • 本書の有効な使い方




 この記事を書いたひと

  • 株式投資10年
  • 世界史好き
  • 投資に関わる分野の本はたくさん読む




 この記事を読むメリット

  • 社会科が好きでないという方にも、『独裁の世界史』に興味が持てる
  • 『独裁の世界史』の主張がザックリと分かること
  • 本書の悪い点も分かる




独裁政治(どくさいせいじ)とは、一個人、少数者または一党派が絶対的な政治権力を独占して握る政治体制を指す。

近代以降は社会主義国・共産主義国・全体主義国・国家主義国にも少なくない。

独裁政治下においては、個人の自由を広く認めることは、政治体制崩壊へのおそれがあると正当化し、抑圧を行う傾向も少なくない。

『独裁政治』 Wikipedia より引用

以上の引用をザックリとまとめると、

  •  1人か少数の人が政治権力を独占
  •  独裁政治は、社会主義国にみられる
  •  権力者の悪口を言えば、牢屋行き




投資の勉強のために、手に取りました。

投資家がなぜ本書を読む必要があるかは後述します。

結果的には、新書なので比較的安く、コスパ以上に学びを得ることができました。




よい点

よい点

・ 分かりやすい

・ 投資に役立つ

・ いろいろ考えさせられる




【よい点1】 分かりやすい

「政治」「歴史」と扱うテーマの割に、全体的にやさしい。




一見、小難しそうな印象のテーマ「政治」「歴史」という組み合わせ。

「社会科」が嫌いな方には、無条件でスルーしたくなる。




しかし、読んでみると意外に難しくない。

短時間でスラスラ読めて、1~2日で読めました。




新書は、「何かの知識を得るための入り口、「入門編」のような内容のもの」が多い。

本書もそのような初心者向けの入門編。




分かりやすさを分析してみると、以下の3点となります。

・ 歴史に興味のない方でも、楽しめる事例

・ 文章がやわらかい

・ 扱うテーマが、世界史は幅広いが、政治は「独裁」のみでシンプル




筆者がローマ史が専門。

特に「アテネ」「ローマ」のあたりは、

・詳しい

・分かりやすい

・おもしろい




例えば、興味深いエピソードを持つ暴君の話も多数出てきます。




古代民主主義。

アテネは、わずか50年しか保つことができなかった。

けれど、ローマは500年続いた。

それはなぜか?




このあたりを、

へぇ、なんでだろう?

という方は、ぜひ手に取ってみてください。




【よい点2】 投資に役立つ

本書を読めば、「政治」「歴史」両方の知識が同時に身につくので、投資に生かせます。




投資を成功させるには、「政治」「歴史」の知識は欠かせません。

投資判断の土台となる、世界の出来事(ニュース)の理解度が上がるからです。




投資における「政治」「歴史」を学ぶ重要性は、以下の3点です。

・ ニュースを深読みすることが投資に有効

・ 投資にとって大事なニュースは、大きなニュースばかりではない

・ 世界への投資を考えると、独裁国家についても考えざるを得ない




ニュースの裏側

「政治」「歴史」の知識があるかないかで、同じニュースを見ても、

・ ニュースの表面しか読めない

・ ニュースの裏側まで読める

とでは、ニュースから得られる情報量、質ともに差が出てきます。




情報量が多く、質の高いニュースを元に投資判断をする。

そのため、投資判断の質が上がることになります。




また、近年はグローバル化が加速。

世界は、より密接につながっています。




たとえば、遠い世界の出来事も、まわりまわって、後々日本に影響を受けるなんてことも以前に比べて多くなりました。

コロナの世界的流行も、世界が密接につながりすぎた、負の「グローバル化」の例。




今後さらに加速するグローバル化。

米国投資を代表とした、全世界に目を向けた株式投資。

世界の「政治」「歴史」を学ぶ必要性は、今後さらに増します。




小さいニュースも見逃さない

小さいけど重大なニュースを、しっかり見極めるには「政治」「歴史」の知識が土台となります。




株式投資をしていると、ほんの小さなニュースが、後から考えると重大なニュースだったという経験は多い。




「一面、その日のトップ」「市場が注目する〇〇統計」などニュースの大きい小さいではありません。

・ 小さいニュース

・ 多くの人が注目もしないニュース

そんなニュースが、実は「政治」「歴史」のターニングポイントのときがあります。




新書一冊一冊は、紙面が限られ、内容は薄いもの。

しかし、

・ 意識的に数多く読み、

・ 継続的に知識を積み上げていく

ことで、新書でも膨大な学習量となります。




こうした小さな積み重ねにより、「政治」「歴史」の知識が少しずつ蓄積されます。

そして、少しずつ重要なニュースを気づくことができるようになると考えます。




自分の頭で考えてみること

独裁国家は、投資家には非常に不人気です。

民主国家に比べると、独裁国家は、投資家に嫌われる「先行きの不透明感」がより強いからです。




例えば、 ともに経済大国であるアメリカと中国。

投資するならどっちがいいか?を考えてみると分かりやすいですよね。




・ なぜ、独裁は投資で毛嫌いされているんだろう?

・ 本当に、投資と独裁国家は相性が悪いのか?

・ 投資家に人気のアメリカでも、独裁国家になる可能性はあるのか?




本書を読んで、自分なりに答えてみることが大事です。




【よい点3】 いろいろ考えさせられる

「独裁=悪 民主主義=善」と多くの方が考えています。




世界史を学ぶと、 「独裁=悪 民主主義=善」と単純な話ではないと分かります。

・ 優れた独裁者が、すばらしい業績を残した例

・ 衰えた民主主義が、衆愚政治となりさがる例

・ 最悪の独裁者が、民主主義から生まれた例




現在の世界を見れば、独裁国家がいいものではないのは明白。

だからといって、「独裁=悪」というのは少し短絡的すぎます。




例えば、中国のコロナ対応。

初期対応のまずさ、当局の強引なやり方の是非はともかく、

・ コロナの抑え込みは早かった

・ 経済の復興もすごく早かった

・ 市民の通常生活に戻ることが早かった

「危機対応」という一点だけみれば、「優れている」と認めざるを得ません。




「民主主義は最高」ではない理由

本書では、「独裁=悪は本当?」を分かりやすい例を示しながら問いかけてきます。

「独裁=悪は本当?」を今一度改めて、自分の頭で考えてみるよい機会となります。




欧米では、民主主義を盲目的に信じていません。




ヒトラーのような最悪な独裁者を生んだのは、民主主義だったからです。

民衆の熱狂を追い風に、合法的に権力への階段を一気に駆け上がり、独裁者になる。

民主主義も一歩間違えば、とんでもないことになる経験が、ヨーロッパの方々にはあります。




一方で、日本では(ヒトラーほど)最悪な独裁者は歴史上いません。

そのため、多くの日本人は、「民主主義が最高」となんとなく考えています。




両者の違いは、歩んできた歴史の違いが関係あります。

日本人も、世界史から学び、今一度「民主主義」というものに考えてみる必要がありそうです。




賛否両論あるとは思いますが、 最後の章は、非常に考えさせられるものとなっています。

「AIによる独裁」は、今後の人類が真剣に向き合わなければならない話です。




普段考えないことを考えてみる

本書の有効な活用法としては、

・ 読んで知識を得る

・ 読了後、自分の頭で「独裁政治」を考えてみる

「独裁政治」を考える機会なんてまずありません。

たまには、滅多に考えないことを考えてみるのもいいですよね。




悪い点

悪い点

・ 都合のよい例

・ 駆け足気味

・ 独裁者の影響




【悪い点1】 都合のよい歴史例

歴史は、見方を変えればどうとでも解釈ができるもの。




ざっくりこの本の主張を書くと、「独裁も使い方次第でわるいものじゃない」

都合の悪いものは目をつむって 、この主張に合わせるための事例を集めてきたように感じる部分がある。




例えば、以下の3点。

・ アテネ・ローマ時代の話から、いきなりフランス革命まで飛んでいる。

・ 「世界史」と銘打ちながら、扱うのは欧州のみ。

・ 歴史上最悪な独裁者による虐殺をあまり深く触れない




新書という紙面を限られるので致し方ない部分もありますが、偏りを感じます。




駆け足気味

新書の限られた紙面で、世界史全体を網羅することは難しいので仕方ない。




筆者の専門がローマ史。

そのため、終盤の近世は駆け足気味であり、どうしても内容が薄く感じてしまう。

この内容の薄い近世部分が、本書の質に関して足を引っぱり、説得力を半減させている印象を与えてしまっている。




例えば、「独裁の世界史」ではなく、「独裁のローマ史」とする。

筆者の専門、ローマ史を題材にガッツリ独裁を描いた方が、より内容のよいものができたはず。




独裁者の悪影響

独裁者の悪い面を軽視している。




たとえば、歴史上独裁者による凄惨な大量殺人の例は山とあります。

・ その犠牲者は、同じ国の人々である例が多い

・ 最初は善政を敷いている

・ だんだんおかしくなる

そのような、独裁者の負の面をもう少し強調したうえで、読者に問いかける必要がある




また、歴史的に見ても、独裁者を権力の座から引きづり下すのは、簡単ではない。

・ 独裁者が自ら身を引くということはない

・ 暗殺、内乱、外国との戦争(で負ける)など血が流れる

・ このような混乱で最も被害を受けるのは、一般市民




いずれにしても、独裁者の負の面は強調してしすぎることはない。




最後に、個人的な意見です。


仮に自分や自分の大切な家族が、独裁者に罪もなく不当に殺されたとします。

「独裁も、悪いばかりじゃない」

と、自分事になれば、さすがにこんなセリフはでてきません。




また、今現在も独裁国家で、大変な苦しみを味わっている人々が世界にはたくさんいらっしゃいます。

そのような人々のことを考えると、迂闊なことは言えないと考えます。




独裁の世界史 目次

ご参考まで、目次です。

目次をご覧いただければ、書いてあることがある程度分かります。




序 いま、なぜ世界史を考えるのか


第1部 独裁は悪なのか?

 第1章 古代ギリシャの独裁

 第2章 民主政はこうして生まれた

 第3章 リーダーの見識

 第4章 プラトンが求めた「独裁」


第2部 独裁は防げるのか?

 第5章 独裁を許さないローマの知恵

 第6章 共和制ローマの独裁官

 第7章 共和制から帝政へ

 第8章 帝政の急所は後継者問題にあり

 第9章 ローマはなぜ滅びたか


第3部 独裁は繰り返すのか?

 第10章 革命と「恐怖政治」

 第11章 「良い独裁」の光と影

 第12章 なぜロシアで独裁が続くのか

 第13章 ムッソリーニとヒトラー


第4部 世界史の教訓

 第14章 独裁を防ぐヴェネツィアの知恵

 第15章 「デジタル独裁」という未来





まとめ:「政治」「歴史」を同時にサクッと学べる良書

『独裁の世界史』は、重いテーマを扱いながら、読みやすく分かりやすい一冊です。

日ごろ、考えない「政治」についても考える良い機会となります。




よい点

・ 分かりやすい

・ 投資に役立つ

・ いろいろ考えさせられる


悪い点

・ 都合のよい例

・ 駆け足気味

・ 独裁者の影響




よろしければ、どうぞ

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