読書

【感想】新・平家物語(合本)吉川英治 

この記事では、小説『新・平家物語』の魅力をお伝えします。

内容としては、おススメする理由(レビュー)や物語の全体の流れに触れていきます。


『新・平家物語』は、平家の興亡を描いた歴史長編小説。

映画、人形劇、大河ドラマ(ともにNHK)になりました。

作者は、吉川英治。

有名な作品も数多く、ファンも多い「国民的作家」の一人。


しかし、『新・平家物語』は、文庫本で16巻の超大作、しかも歴史もの。

長いけど、自分は読み切ることができるだろうか?

歴史ものは、自分でも楽しめるだろうか?

このように、たじろいでしまう方も多いはず。


この記事で分かること

・ 読み切るために、どんな人におススメか

・ おもしろさの解説(本作のよい点、悪い点)

・ 簡単な歴史の流れ(本作を楽しむための下準備)


この記事を書いた人

・ 最近、読み切った人

・ 歴史が好き

・ 吉川英治ファン


結論としては、

・ あまりの長さに最初はたじろぐ

・ 読み始めたら面白くて止まらない

・ 完読後、他では味わえない唯一無比の読書体験




本記事を読んでいただければ、

へぇ、おもしろそう。

長いけど、自分も読んでみようかなぁ

と興味を持っていただけます。


おススメする人

どのような方が、「読み切る」ことができやすいかという観点から。

1. 30代以上のある程度の人生経験がある

2. 読書が好きな方

3. 歴史が好きな方




30代以上のある程度の人生経験がある

人生経験をそれなりに重ねてきた30代からがおススメ。

年齢を重ねれば、重ねるほど楽しめる。




大きなテーマが「驕れるものは久しからず」

10代、20代では、若すぎてピンとこない。




実は過去2度、私は通読に失敗しています。

小学生と大学生のころ、いずれも途中で飽きてしまいました。

話ばっかりでつまらない!

戦争シーンはまだ?

しかし、40代になり人生経験を少し積んで読んでみると、「最高に」面白い作品だと感じます。




読書が好きな方

文庫版で16巻。ページで軽く5,000ページ超え。




読書習慣がある方は、数ページ読んでいただければ、スッと物語に入り込めます。




読書習慣のない方には、5,000ページはプレッシャーになるかもしれません。

「買ったからには、読まないと・・・」

となると、いくらおもしろいものでも苦痛になります。




必要以上に身構える必要もないですが、

・ 毎日でなくても、気が向いたら少し読む

・ 挫折しても、また数年後読めばいいと気楽に考える

・ 最後まで読まなくても責めない

 (読書家でも、途中までしか読まない本はザラ)




気軽に手に取っていただければなぁと考えます。




歴史が好きな方

平氏の興亡から鎌倉幕府の成立の流れの予備知識があれば、さらに楽しめます。

コテコテの歴史好きでなくても大丈夫。




ただ、作品中は、詳しい歴史の背景を解説するシーンはありません。

物語中も、複雑な歴史背景はありませんからありがたい。




歴史好きなら、より楽しめるという話。




新・平家物語の特徴

3つにまとめました。

・  平清盛が『いい奴』

・  平家物語に+α

・  多少史実と違う




平清盛が『いい奴』

「やんちゃだけど、曲がったことが嫌い。喜怒哀楽のある人間味あふれる人物」




一般的に、平清盛のイメージは、「奢り高ぶっている」「つるつる頭でいかにも悪者」




しかし、新・平家物語で描かれる清盛は、

・ 自分の生まれに苦悩する若者時代(天皇の隠し子)

・ 恋に奥手

・ 後白河法皇との権力争いも、堅苦しい都住まいも、実は嫌い




読んでいても、微笑ましく好感が持てる人物です。

「奢っている」という姿とは程遠い。




平家物語に+α

題材は『平家物語』だけでなく、『保元物語』『平時物語』『義経記』『玉葉』など複数の古典をベースにしながら、より一貫した長いスパンで源平両氏や奥州藤原氏、公家などの盛衰を描いた長編作品。

『新・平家物語』 wikipedia より引用




平家物語は、一般的には「平家滅亡まで」描く作品が多い。

平家滅亡後も、描く少し珍しい作品。




なぜ、蛇足になりがちな「平家滅亡後」を描くのか?

「新・平家物語」の主題に大きく関係するからです。




最後まで読むと、このあたりが、

なるほど!

そういうことか!

と分かります。




多少史実と違う

最近の歴史研究で明らかになったことは、当然ながら反映されていません。

ほんの一部だけですが紹介すると、

『新・平家物語』史実
時子が、清盛の正室 清盛は再婚。2人目の妻が時子
時子の長男は、平重盛 平重盛は、清盛の先妻の子
一の谷の戦いの勝因は、義経の奇襲 直前の後白河法皇による和平案で平家が油断




作者の吉川さんも「あとがき」の中で、認めています。

歴史とは、少し違うところもあるんだなぁ

と頭の隅に置いておく方がいい。




『新・平家物語』流れ ※ネタバレのため、必要のない方は読み飛ばしてください

おおまかな歴史の流れだけでも頭にないと、

✔ 多くの登場人物

✔ 激動する歴史

上記の2つについていくだけで大変。




全部読むことができず、脱落するかもしれません。

読んでいて、

「この人、誰だったっけ? 」

はけっこうあります




「平家物語ってそもそもなに?」という方のために、ザックリとした歴史の流れを記載しました。




保元・平治の乱

平安時代末期、都を舞台とした2つの大乱が発生。

2つの大乱を通じて天皇家・藤原家・源氏が没落。

代わって平清盛率いる平家が台頭。

出典 歴史まとめ.net より

出典 歴史まとめ.net より

歴史まとめ.net




平家の権力が頂点

「平家にあらずんば人にあらず」

清盛を中心に平家一門が重職を独占。

権力を欲しいままにする。




清盛の死と源氏の挙兵

平家が権力を握って20年余り。

各地で「反平家」の兵が挙がる。

時を同じくして、絶大な権力を誇った平清盛が死去




平家の都落ちと木曽義仲の活躍

快進撃を続ける麒麟児 木曽義仲。

一方、清盛亡き平家一門は、義仲に追われる形で都落ちする。

出典 嵐山町web博物館

木曽義仲の進撃ルートです。

木曽義仲は、信濃(今の長野県)で反平家の挙兵。(地図では宮ノ越スタート)

各地で連勝を重ねつつ、グルっと北陸を周って京都へ。




平家滅亡(一の谷、屋島、壇ノ浦の戦い)

源義経の天才的な戦ぶりで、平家の公達は次々に戦死。

次第に追い詰められた平家は、ついに壇ノ浦の戦いで敗れ滅亡。

出典 桑原政則のBlogger

平家は、連戦連敗。しだいに、西へ西へ追い詰められます。

戦いの順番は、「一の谷」、「屋島」、「壇之浦」の順番。

地図で、場所も確認してみてください。


屋島は、海に浮かぶたくさんの美しい島々が有名なところ。

屋島の戦いに関するスポットも多い。

私も歴史観光と美しい景色目当てに、旅行に行きたいです。

じゃらん 屋島

屋島古戦場からの一枚。

出典 グーグルマップ 屋島古戦場



義経の死

義経の天才的な軍才を恐れる、兄頼朝。

頼朝の仕掛ける罠にはまり、しだいに追い詰められていく義経。




頼朝の死

平家を滅ぼし、鎌倉幕府が成立。

すべてを手に入れた頼朝だったが、若くして死ぬ。




よい点

よい点を3つにまとめました。

1. ぐいぐい読者を虜にする文章や表現

2. 平家が持つ『力強さ』と『優雅さ』の表現がうまい

3. 長くても中だるみしない




よい点1 ぐいぐい読者を虜にする文章や表現

詩的で、歯切れのよい文章が心地よい。




くどくどと説明しないから、文章間で隙が生まれます。

隙があるから、読者が読み進めながら、さまざまな想像する。




読書だけが持つ「読書体験」とよく言われるものです。

さらに、吉川英治作品の魅力が+アルファされた最高の「読書体験」。




このあたりが、今なお吉川英治がファンを獲得し続ける理由です。

『格調高い』と表現されている方もいます。

文章自体も柔らかくて分かりやすい。

少し読み始めると、スラスラ読めていける。




読み終わって目を閉じてみると、さまざまな場面が目に浮かびます。

あれほど長かった物語ですが、詩的ゆえに、思い出される場面はまるで「さし絵」を思い出すよう。




私は、小説には2種類あると考えています。

読み終わってから、

・ いつまでも内容を覚えている作品

・ 1週間もすれば、内容を忘れてしまう作品




いくつか吉川英治作品を読んでいますが、明らかに前者。

いい意味で、記憶にしっかり残っているから10年くらいは再読はないかも。




よい点2 平家が持つ『力強さ』と『優雅さ』の表現がうまい

 平家 武士 + 貴族

 源氏 荒くれものの東国武士




他の「平家物語」も読んだことあります。

「力強さ」が物足りないんですよね。

「貴族」の優雅さが前面に出て、武士らしさがないというか。




『新・平家物語』で描かれる平家一門は、しっかり武士の血が流れています。

合戦では、名に恥じない武士の顔を見せる。

一方で、平家の公達たちは、 戦場においても、貴族らしく歌詠みや楽器の演奏する姿をみせます。




個性的な平氏一族の公達。

長年住み慣れた京の町から都落ちをし、戦死後に首だけとなってのちに都に帰還。

あの華やかだった平家の公達たちが、都で首をさらされるのは、皮肉でもあり物悲しい。




よい点3 長くても中だるみしない

改めてですが、吉川英治の筆力がすごく高い。

子どものころ、夢中になって読んだ「吉川英治三国志」。

おもしろさは、大人になった今も相変わらずといったところ。




中だるみしないのは、平家以外の主人公をコロコロ変えて、物語が進むことが大きい。

例えば、平家以外としては、「源頼朝」「源義経」「木曽義仲」など。

また、「麻鳥」という市中の医者もいます。




平家物語と言えば、「おごれるものは久からず・・」が有名です。

一般的には、「平家一門がおごり高ぶったために滅亡した」と思われがち。




実は、『新・平家物語』において描かれる「真のおごれる者」は、平家ではありません。

本当に、「おごり高ぶっている」者たちは別にいるからおもしろい。

そのあたりは、読んでからのお楽しみとさせてください。




悪い点

あえて、挙げるとすれば3点

・ 詩的ゆえに言葉足らず

・ 人物描写が物足りない

・ すごく長いこと




悪い点1 詩的ゆえに言葉足らず

短い言葉で表現することが多い上に、詩的。

ついつい、ササっと斜め読みしていると、大事な登場人物でもサクッと死んだりします。




例えば、よくあったののがこれです。

「〇〇は、首を授けてしまった。」

(え?まじ?今、死んだ?)

と読み返すことが多かった。




主要な登場人物でも、容赦なくその最期はほんとあっさり。




悪い点2 人物描写が物足りない

心の奥底をのぞき込むような深い人物の心理描写はない。




例えば、源頼朝。

子どものころ、平家に命を救われた彼がなぜ反旗を翻したのか?



兄頼朝を慕う義経のいきなりの変心。




尊敬する吉川英治さんが、何を思い、どう考えていたか、チラッとでも見たかったのが本音。

例えば、主人公の一人、義経。

吉川さん自身が、彼に好意があるのか、ないのか読んでいても分かりません。




ただ、物語の最後の方で、後白河法皇に対してだけはかなりきつい批判があります。

後白河法皇に関しては、吉川さんが嫌悪感があったと考えられます。




悪い点3 すごく長いこと

5,000ページは長い。

読むほうも、相当覚悟がいる。




おもしろいし、なかだるみもないのです。

しかし、読み進めながら、途中で全く違う話が読みたくなることも多々ありました。




例えれば、おいしい日本料理。

たしかにおいしいけど、毎日はイヤ。

たまには中華や洋食も食べたい日がある。




他のブログで拝見すると、読了まで「半年」「一年」とありました。




まとめ 人生経験を積んできた30代以上におススメ

『新・平家物語』を紹介させていただきました。

とても長いですが、かなりおもしろいのでぜひ読んでみてください。

忘れられない一冊になります。




おススメする方

1. 30代以上のある程度の人生経験がある

2. 読書が好きな方

3. 歴史が好きな方




よい点

1. ぐいぐい読者を虜にする文章や表現

2. 平家が持つ『力強さ』と『優雅さ』の表現がうまい

3. 長くても中だるみしない




悪い点

・ 詩的ゆえに言葉足らず

・ 人物描写が物足りない

・ すごく長いこと




おススメは、

・ 電子書籍で買う

・ 16冊まとめた「合本」を買う

・ セールを狙って買う

私は、激安セールでたまたま、399円で買えました!

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