
「イノベーション・マインドの力」っておもしろいの?
「ライト兄弟 イノベーション・マインドの力」 は、ライト兄弟の伝記作品です。
ライト兄弟とは、兄ウィルバー、弟オーヴィルの二人。
人類初の有人動力飛行を成功させた偉人として有名ですよね。

ライト兄弟の伝記?
漫画で子どものころに散々読んだ!
そのような方も、大人になった今、改めて読んでいただきたい作品。
なぜなら、大人になってみて初めて分かるライト兄弟の光と影。
「ライト兄弟の真の姿」が詳細に描かれているからです。
この記事でわかること
・ 感想(よい点、悪い点)
・ 株式投資に役に立つ!「起業家」ライト兄弟の分析
・ ライト兄弟による飛行成功時の話
この記事を書いた人

・ 株式投資歴10年
・ 投資の勉強のため伝記を数多く読む
ライト兄弟の本業は、「(腕のいい)町の自転車屋さん」。
飛行機は、「副業」でした。
飛行機で有名になる前のライト兄弟は、「田舎の小さなお店の店主」。
・ お金ない
・ 人脈ない
・ 本業が忙しい
圧倒的不利な状況で、ライト兄弟は「何を考え」「どのように」偉業は成し遂げたのか?
伝記は、一人の偉人を深堀するため、このあたりを理解しやすくなります。
本記事をご覧いただければ、こんなメリットがあります。
「イノベーション・マインドの力」を通じて、
・ 大人になった今だから分かるライト兄弟の「本当のすごさ」
・ 大人になった今だから分かる ライト兄弟の「本当の苦労」
・ ライト兄弟から「副業」「起業」の心得を学べる
Contents
よい点

3点にまとめました。
よいところ3点
・ 大人向けの伝記であること
・ ベストセラーであること
・ 成功した後の悲劇にも触れていること
大人向けの伝記であること

ライト兄弟が書いた手紙、当時の人の証言など多数掲載されています。
作者自身の脚色などもなく、客観的事実を淡々と並べます。
特に印象的なのは、「山場である」人類初の飛行成功においての場面。
作者はいい意味で、淡々としています。
子どもが読むライト兄弟の伝記の多くは、初成功時は感動的に描かれます。
下手に熱量を上げず、淡々としているあたり、「一味違う」と感じさせます。
飛んだあとの話も、詳細に描かれます。
ネタバレになりますので、詳細は避けます。
偉業のあと、「飛ぶこと」とは別の苦労に襲われる、ライト兄弟の姿が描かれます。

飛行機が飛んだ?
へぇ、すごいよね!
と全世界が喝采!
と単純ではないところが、人の世。
「偉業」だけを無邪気に描かないあたりは、「大人向け」だと感じます。
ベストセラーであること

ニューヨークタイムズ・ベストセラー第一位 アマゾンThe Best of 2015
「ベストセラーには、それだけの意味がある」
とよく言われます。
私も、

へぇ~、そんなに売れている本なの?
おもしろいんだろうなぁ。
と手に取りました。
「ライト兄弟の伝記」は、いろいろなものが数多く、昔から存在します。
それが、2015年の現代になって、なぜこんなに売れたのかは、気になりますよね。
読んでみれば、

こりゃ、ベストセラーになるわけだ!
と思えるとだけ付け加えておきます 。
成功した後の悲劇にも触れていること

成功後、よほどお金と名声に恵まれたかというとそうではありません。
世間からの賞賛と同じくらい、やっかみがすごかった。
また、後に飛行機が戦争で使われたのを目の当たりにします。

子供のころ読んだけど、ライト兄弟がこんなことになったなんて・・
悪い点

全体的には、文句のつけようもない作品。
あえて挙げるとすると、悪い点は3つ。
悪い点
・ 淡々としていること
・ 最後の方が駆け足気味
・ 技術的な難しさ
・ 淡々としていること

当時の人々の証言、ライト兄弟の手紙を多く使用することで「史料」として素晴らしい。
半面、どうしても平坦になりがちで、少し盛り上がりに欠ける。
子供のころに読んだライト兄弟。

初飛行の感動をもう一度 !
って読むと少し肩透かしをくらうかも。
全体としては、よくできていておもしろいんですけど。
・ 最後の方が駆け足気味

飛行機の成功、人々に認められるまでを多くの紙面を使っています。
そのため、人生の後半部分が駆け足気味。
ライト兄弟の偉業のあと、飛行機は飛躍的に発達します。
同時に、戦争に使われるという悲しい一面もありました。
・ 飛行機の飛躍的発達
・ 戦争での使用
について、ライト兄弟はどんなことを考えていたのかを知りたかった。
ライト兄弟の手紙や当時の人々の証言を多く取材している本作。
おそらく、作者の手元には、晩年の史料も多くあったはず。
多少ページが増えてもいいから、人生の後半部分も細かく描いてほしかったというのが本音。
「伝記」としてでなく、「史料」としての価値がもっと上がったはず。
・ 技術的な難しさ

飛行機の技術的なものは、やはり分かりづらい。
作者も、読者に分かりやすくという姿勢は、ところどころ垣間見えます。
ただ、「理系」的な難しさがつきまとう「飛行機」
読んでいて、技術的なことが全く意味が分からないということはないのが救い。

空気力学?
本作の主題は、「ライト兄弟とその家族」
「人や家族」に焦点の本作では、「技術的な難しさ」があっても、物語の魅力が損なわれるわけではありません。
どうしても、技術的なことがもっと知りたい方は、他の本で補完が必要となります。
【投資家視点】ライト兄弟を「起業家」として考察

「経営者」でもあり「起業家」であった ライト兄弟。
なぜなら、自転車屋を「経営」しながら、飛行機ビジネスを「起業」したからです。
その意味でも、ライト兄弟の「経営者」「起業家」としての分析に、本書は大いに役に立ちます。
株式投資では、経営者や起業家を理解することが重要です。
なぜなら、経営者の影響力は企業内できわめて大きく、その力量で企業の業績は左右するからです。
私は、経営者や起業家の「伝記」をよく読みます。
伝記を通じて、優れた「経営者」「起業家」の頭の中を知るためです。
本書も「偉人」の伝記としてだけでなく、「起業家」の分析資料として読みました。
ここでは、他の成功する起業家と共通している点を、3つ挙げてみました。
3つのポイント
・徹底的に勉強していること
・失敗しても気にしないこと
・相手にどう見られても気にしない
徹底的に勉強していること

事前に飛行に関することを、ライト兄弟は徹底的に勉強してから実験をしています。
実験に入っても勉強を続けている。
ライト兄弟は、飛行に関する勉強を通じ、 以下のような独自の結論を確信していました。
・ 飛行機は、空を飛ぶこと自体よりも、空中でいかに飛んだまま安定できるかがカギ
・ そのカギは「鳥の飛び方」にあること
・ 本業の自転車作りで求められる自転車の「安定性」が、飛行機で応用できる
成功する起業家は、「勉強家」「仕事熱心」の方が多い。
しかも、常識ではありえないほどの熱心さですから、驚かされます。
失敗しても気にしないこと

伝記で描かれるライト兄弟は、失敗を気にしているところがない。
失敗したら、

う~ん、何が悪かったんだろう・・
と兄弟ですぐ話し合うシーンが多い。(けっこうケンカになる)
この当時、飛行機に乗ることは、「命がけ」。
当然ながら失敗は、死、大けがの可能性が高い。
本書を読んでいて、舌を巻くのは、

死ぬのはイヤだ!
もうやめ~た!
と二人が一切言わないことです。
成功する起業家は、失敗は全く気にしていない方が多い。
どんな天才でも、何らかの失敗はしています。
ただ、常人と違うのは失敗して諦めない心が強いこと。
「失敗を気にしない」スキルが起業家には必要のようです。
相手にどう見られても気にしない

当時の実験場で、ライト兄弟を見ていた現地の人によると、2人は、
・よく空を見上げて鳥をじっと観察していた
・いろんな鳥のマネをして、手を翼にしてバタバタやっていた
実は、ライト兄弟は鳥の飛び方ではなく、「空での安定性」を見ていました。
なぜ鳥が、たいした力を使わず、空で安定して楽に飛び続けることができるか?
いい大人が二人、空を見上げて鳥を観察、たまにバタバタと鳥のマネをする。
端から見れば「変人」そのものです。
成功する起業家は、まわりからどう見られようが気にしない方が多い。
例えば、スティーブ・ジョブス。
ジョブスは、部下が徹夜して作ったものだろうが、ダメなものは作り直しを命じたとか。
常人だと、

ダメっていいにくいしなぁ・・・
まぁ、よしとしよう。
ジョブスは、人の目や相手にどう思われるかを考えなかったようです。
「別に人にどう見られても構わない」くらいの情熱が、起業家には必要のようです。
「ライト・フライヤー号」初飛行の様子

「イノベーション・マインドの力」にご興味をもっていただくために、初飛行時の状況をまとめました。
人類初の有人動力飛行
ライト兄弟による世界初の有人動力飛行は、
日時 | 1903年 12月17日 午前10時35分 |
場所 | アメリカ ノースカロライナ州キティホーク近くのキルデルヒルズ |
飛行機の名前は「ライトフライヤー号」。
当日は強風。
この歴史的瞬間を目撃した観客は、5人だけ。
記録としては、
飛行距離 | 36.6メートル |
飛行時間 | 約12秒 |
飛行自体は、きわめて不安定。
急上昇と急下降を繰り返した(乗り手を振り落とそうと跳ねる仔馬と表現)
実際に飛んだ弟オーヴィルの証言

怖かったか?そんな余裕はありませんよ。
わずか12秒、しかも上下に揺れて這うように進んだので。
ちなみに、100年後に「ライトフライヤー号」を復元して飛ばす試みがされました。
結果は、飛びませんでした。
理由としては、以下の2点が考えられています。
・実験を繰り返し行ったライト兄弟の操縦の腕前は、相当うまい
・実は、強風がないと飛ばない飛行機

成功の少し前に行われた講演会で、兄ウィルバーも話しています。
「飛ぶためには、操縦技術も相当うまくないと無理。」と。
資金面は、以下の通り。
ライト兄弟 | ラングレー教授(ライバル) | |
お金 | 1,000ドル弱 | 約7万ドル |
お金の出所 | 自転車屋さんの儲け(自腹) | ほぼ公的資金 |
ラングレー教授は、ライト兄弟の成功する数日前に飛行に失敗。
お金、出所をみていただいても、ライト兄弟のすごさが分かりますよね。
まとめ

大人だからこそ楽しめる伝記、「イノベーション・マインドの力」をご紹介させていただきました。
アメリカではベストセラーでも、日本では知名度が低いとか。
ぜひ、実際に手に取って、多くの方に読んでいただきたい作品です。
よいところ3点
・ 大人向けの伝記であること
・ ベストセラーであること
・ 成功した後の悲劇にも触れていること
悪い点
・ 淡々としていること
・ 最後の方が駆け足気味
・ 技術的な難しさ
成功する起業家分析
・徹底的に勉強していること
・失敗しても気にしないこと
・相手にどう見られても気にしない