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【ネタバレなし】沈黙のパレード 感想とあらすじ

この記事では、東野圭吾『沈黙のパレード』の魅力を紹介します。

冒頭のあらすじ、よい点悪い点に触れていきます。



『沈黙のパレード』は、万人におススメできる、東野圭吾屈指の傑作。

ドラマ・映画で大人気、ファン待望の『ガリレオシリーズ 第9弾』。




出典 福山雅治 オフィシャルウェブサイト

映画化決定!

公開は、2022年9月16日(金)。

福山雅治オフィシャルウェブサイト



この記事でわかること

  • 【ネタバレなし】『沈黙のパレード』の冒頭あらすじ
  • 『沈黙のパレード』感想 良い点3つ
  • 『沈黙のパレード』感想 悪い点3つ



『沈黙のパレード』がいかに評価が高いかは、アマゾンの星の数をごらんください。

星4.5 222個の評価(21.2.18現在)

出典 amzon より





この記事を書いた人

  • 【ほとんどの作品読了】東野圭吾ファン
  • 読書家
  • ガリレオ、加賀恭一郎シリーズは全作読む



シリーズ物。第9弾から読んでも、楽しめるか?

『沈黙のパレード』だけ読んでも、楽しめます。



理由としては、2つ。

  • 複雑な人間関係がないから
  • シリーズ物でよくある、「前作見ておかないと楽しみが半減」がないから

幸い、ドラマ・映画をご覧になった方も多く、登場人物もおなじみという方も多いはず。

仮に全く知らないという方でも、大丈夫です。



私は、先が気になって気になって、ついつい夜更かしして読みました。

東野圭吾の最高傑作を、ぜひ実際に手に取ってお楽しみいただければ幸いです。



東野圭吾さんの『マスカレード・ナイト』も紹介させていただきました。

こちらもおススメです。ご興味があれば、ご覧ください。






『沈黙のパレード』あらすじ




突如行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。


容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。

だが、今回も証拠不十分で釈放されてしまう。

さらに、その男が堂々と遺族の前に現れたことで、町全体が憎悪と義憤の空気が漂う。


秋祭りのパレードの当日、復讐劇はいかに遂げられたのか。

殺害方法は?アリバイトリックは?


超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。


引用 『沈黙のパレード』 東野圭吾




※もう少し補足します。


物語の舞台となるのは、菊野商店街。


町にある定食屋『なみきや』の看板娘 並木佐織。

類まれな歌の才能と、アイドルのような美貌を持つ19歳の少女。



佐織が突如、失踪してから3年後。

縁もゆかりもない静岡県のとある古い民家で焼死体として発見された。


事件を担当した草薙が、目にした容疑者の名前を見て愕然とする。

草薙が、忘れたくても忘れられない名前、『菅沼寛一』

(あの『菅沼』か・・・)


草薙と菅沼には、因縁がある。

19年前に、まだ駆け出しの刑事であったころ。

若い草薙が、同じような少女殺害事件の容疑者として追い詰めた相手。

それが菅沼だった。


菅沼の徹底した完全黙秘、証拠不十分で、もう少しのところで、逮捕できなかったのだ。

今回の『並木佐織事件』においてもまた、同じだ。

菅沼を容疑者として追い詰めながらも、完全黙秘と証拠不十分で、あと一歩で逮捕までいたらなかった。


深い悲しみに暮れる町の人々。


そんなある日、定食屋『なみきや』に、容疑者 菅沼が現れる。


激高する佐織の父 並木祐太郎。

「おい!何をしにきた!お代はいらないから帰れ!!」

「あんた、なにか勘違いしていないか?」

「なに!」

「無罪の俺を犯人扱いしやがって!警察に取り調べられて散々だった。賠償金を払えよ!」




あろうことか菅沼は、並木佐織の両親に「賠償金」を要求しにきたのだ!




菊野商店街で行われる仮装パレード『キクノ・ストーリー・パレード』。

全国からも仮装参加者が訪れる、街をあげての一大イベント。


大きな盛り上がりを見せる祭りの日の当日、『なみきや』に一人の常連客が、飛び込んでくる。

「おい、大変だ!菅沼寛一が死んだ!!」


容疑者は彼女を愛した普通の人々。

哀しき復讐者たちの渾身の謎(トリック)が、湯川、草薙、内海薫の前に立ちはだかる。

引用 沈黙のパレード 東野圭吾




動画も見つけました!




『沈黙のパレード』感想 よい点

個人的に「ガリレオシリーズ屈指の名作」だと思います。

いいところを挙げだすと、キリがありませんが、3点に挙げてみます。


3つの良い点

  • 人物描写がうまいこと
  • 読者を虜にすることがうまいこと
  • 読み終わって納得感があること




【よい点1】人物描写がうまいこと

東野圭吾さんは、人物描写に定評があります。


「登場人物の息遣いまで聞こえてきそうだ」と表現されますが、やっぱり読んでいてもそう感じるからです。

『沈黙のパレード』でも、遺憾なく発揮されていますから、登場人物が生き生きとしています。


とくに、娘を無残に失った夫婦の心情は、私自身も娘がいることもあり本当につらかった。


街の人気娘 佐織を失った街の人々の深い悲しみ、犯人がなぜか逮捕されない、行き場のない怒りが本当によく伝わってきます。


菅沼って本当にムカつきます。

遺族に賠償金を要求するくだりなんかは、読んでいても、怒りで自分の顔色が変わるのが分かりました。

小説読んでいて、怒りで自分の顔色が変わるなんて経験は、たくさん小説読んできたけど初めてです。


【よい点2】読者を虜にすることがうまいこと

読み進めていくと、読者は自分も「菊野商店街の住人」のような気持ちにだんだんなっていきます。

人物描写が優れている、ストーリー展開や強弱の付け方。人気作家ゆえ、読者を虜にするのは朝飯前といったところでしょうか。


序盤ですが、菅沼が賠償金を要求するあたりには、もう世界にどっぷり入り込んでいます。

(菅沼ぁ、コイツだけは許せない!)


菅沼が死んだと聞いて、

(ざまぁみろ!)


言葉は悪いですが、読んでいて本当にこんな気持ちになります。


自分もすっかり「菊野商店街」の一員。

事件の真相は知らない、悪いことは何もしていない。

けど、自分もなんだか共犯者のような気分です。


だから、草薙やガリレオが少しずつ事件の真実に近づくにつれ重い気持ちになってきます。


何も悪いことしていない!

警察に追われるってだけで、こんなにドキドキするのか・・・

真犯人が分からない

人間のクズ 菅沼を殺した犯人なんて、無理に捕まえなくていいよ・・・

名探偵に追われる犯人の気持ちを味わうことができるのは、貴重な体験でした。


車で道走っていて、パトカーを見かける。

何もしていないのに「ドキッ!」とする経験ありませんか?

その「ドキッ!」を、もっと強くしたような気持ちですね。


このような「ドキドキ」感は、物語全部を書いた「あらすじ」を、ササッと読んでも味わうことのできないところです。

「あらすじ」ではなく、原作を読んで、このあたりを楽しんでいただければなぁと思います。


ガリレオが、『なみきや』に来るたびに、読んでいてドキドキします。

事件の真相にググッと迫る、鋭い質問。

なんでも見通しているかのうような、涼しい目。

ガリレオを敵に回すと、こんなにも恐ろしいのか!




【よい点3】読み終わって納得感があること

ストーリー全体が最初から終わりまで、しっかりときれいにまとまっています。

伏線の回収がない、オチで残念だ、読んで損した などがないからです。

このあたりは、さすが東野圭吾さんですね。


東野圭吾ファンの私ですが、正直微妙な作品もあるにはあります。

確率的に「当たり」が多い作家ではありますが、全作品おもしろいというわけではありません。

中には、首をかしげたくなる作品もあるのも事実。


しかし、『沈黙のパレード』は万人におススメできます。

誰もが共感しやすいストーリーに加え、人間関係の把握も簡単だからです。


『沈黙のパレード』では、容疑者は街の人々という複数、人間的に残念な被害者、ガリレオなど。


ひとつ扱いを間違えれば、駄作になるのですが、人物をうまく動かしつつ、物語を展開。最後まで、読者を飽きさせずに終わりに持っていく。

大きな風呂敷をパっと広げながら、ちゃんとたためてしまうのはさすがだなぁと感心します。


読み終わってから「はぁ、楽しかった!」と思いながら、「あの人はどうなったのかなぁ」と登場人物のその後の人生に思いをはせるなど・・・

「小説を楽しむ醍醐味がここにあり!」といったところです。

これだから、小説を読むことは止められませんよね。


『沈黙のパレード』感想 悪い点

正直、本当に『粗探し』レベル。

「素晴らしい」の大絶賛だけでなく、多少良くない点に触れてみます。

記事の信頼性を担保するために、あえて3点挙げます。


3つの悪い点

  • 残念な人がいること
  • ガリレオの成長
  • ビックリするようなトリックがないこと




【悪い点1】残念な人がいること

最後の方で、「?」となる方がいるからです。


アマゾンレビューを読むと、そのあたりに違和感があったとの指摘もありました。

ネタばれになるので、あまり深く触れません。


人にはいろいろな顔があります。

どんなよい人でも、悪いところは必ずあります。

より「リアル」な人間描写と言えます。


物語の後味を悪くするとか、そんなレベルの悪さではありませんからご安心を。

この「?」となる違和感もまた、読了後の良いスパイスとも言えます。


【悪い点2】ガリレオの成長

人変わりとはいいませんが、けっこう「丸くなった」「人間味がでた」と感じたからです。

前作から4年経過し、アメリカから帰国したガリレオ。

その間のことは、触れていません。


別シリーズ「加賀恭一郎」は、人情派刑事で、物語もそんな感じです。(阿部寛さんはアタリ役ですよね)

『加賀恭一郎』シリーズまでいかなくても、けっこう「人間味があふれていた」


「科学しか興味なし」といった、かつての変人の面影はなくなりました。

『なみきや』に通って、常連客とのふれあいを楽しむ姿も見られます。

あの『ガリレオ』先生が・・・変わられたなぁ




別人というほどでもなく、いい意味で人の成長を感じさせる程度キャラ変更。

古参のガリレオファンが、「おいてけぼり」ということはありません。


ただ、最後のガリレオのセリフが、結構意味深。

ガリレオは、「変わったふり」をしているだけかもしれません。


ガリレオのモデルは、佐野史郎さん

人変わりといえば、いまでこそドラマの影響で 「ガリレオ=福山雅治さん」。

しかし、シリーズ初期のガリレオのモデルは、実は俳優 佐野史郎さん です。

シリーズ初期、「ガリレオ」と「草薙」のおっさんペア、理系バリバリのトリック、まさに加齢臭が漂うシリーズでした。


美人刑事 内海薫が入ったあたりから、ガリレオシリーズが、パっと華やかになった印象です。

内海薫もドラマで言えば 柴咲コウさん。

まさに、美男美女のカップルですよね。


二人のやり取りのワンシーンからです。

出典 ENAK

するとなぜか湯川が楽しそうに表情を緩めた。


「どうかしましたか?」

「いや、久しぶりで懐かしいと思ってね。目の前で若き美人刑事が頭を悩ましている」

「もうそんなに若くありません」

「美人、というほうは否定しないんだな」


薫は旧知の物理学者をにらんだ。

「からかうなら、もう失礼します」


引用 沈黙のパレード 218ページ 東野圭吾




このやりとりを、「ガリレオ=佐野史郎」で頭に描くと、相当違和感があります。

このやりとりを、ガリレオを福山雅治さん、内海薫を柴咲コウさんに変換して、頭にイメージすると、しっくりきます。


佐野史郎さんは、なかったことになって、福山雅治さんに寄せていっているのかもしれませんね。


【悪い点3】ビックリするようなトリックがないこと

ガリレオの割に、あっさり風味だからです。

ガリレオといえば、常識では考えられないような不思議な事件を、理系の知識を生かしてガリレオがスパっと解決することが定番。


理系出身の東野さんらしいトリックの数々。それはそれでおもしろいです。

最近のガリレオシリーズでは、特に顕著ですが、「人」に焦点が当たっています。

奇抜なトリックうんぬんではなく、「人」。

ある意味、人を選ぶ「理系」の話から「人」にシフトしたことで、読者が共感しやすくなり、より人気が出たとも言えます。


私は、全作品読んでいますが、パっと思い浮かぶのは『容疑者Xの献身』『聖女の救済』などです。

「細かいトリックは忘れたけど、話は覚えている」、そんな感じです。


結論を言えば、ビックリするようなトリックがなくても十分楽しいので問題ありません。


商店街に住む普通の人々が、警察も頭をかかえるようなトリックを使う方がよほど違和感がありますよね。


まとめ:ガリレオに追われる犯人の気持ちが味わえる傑作

いかがでしょうか?まとめてみます。


『沈黙のパレード』あらすじ

突如行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。

容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。

だが、今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらに、その男が堂々と遺族の前に現れたことで、町全体が憎悪と義憤の空気が漂う。

秋祭りのパレードの当日、復讐劇はいかに遂げられたのか。

殺害方法は?アリバイトリックは?

超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。

引用 沈黙のパレード 東野圭吾

容疑者は彼女を愛した普通の人々。

哀しき復讐者たちの渾身の謎(トリック)が、湯川、草薙、内海薫の前に立ちはだかる。

引用 沈黙のパレード 東野圭吾




『沈黙のパレード』感想 よい点

3つの良い点

・ 人物描写がうまいこと

・ 読者を虜にすることがうまいこと

・ 読み終わって納得感があること




『沈黙のパレード』感想 悪い点

3つの悪い点

・ 残念な人がいること

・ ガリレオの成長

・ ビックリするようなトリックがないこと




小説は、図書館で借りることをおススメします。

時間がない方には、ご参考までにどうぞ。




最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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